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3-4 本

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箱星
著者
箱星
のんびり暮らしたい。

ボーカルレッスンを終え、事務所に戻ってきた。

「ご苦労。こんな感じでレッスンをやっていくからな」

「はい!レッスンで成長するの、楽しいです!」ひかりは明るい笑顔で言った。

「その調子だぞ、初本。明日のダンスレッスン、明後日のビジュアルレッスン、明々後日の数学レッスンも頑張れよ!」

「数学……」

「何を怖気付く必要がある。そうだ、数学レッスンについてだが」

そういうと淳夫は本を取り出した。

「こういう本を見つけてな。オイラーの等式を解説している本らしい」

「一冊全部オイラーの等式ということですか?」菫は質問した。

「ああ。それだけ解説する価値のある等式ってことだろう。それに、意欲ある高校生でも読めるって書いてあるから、お前らにぴったりだな」

「なるほど」

「今読んでみてもいいですか?」ひかりは質問した。

「いいぞ」

本が開かれ、わたしたち3人は中身を眺める。

「うわー、難しそう……」ひかりは小さな声で言った。

「このあたりは高校でも習うことだね」菫は言った。

わたしも本を眺める。そこには様々な数学のトピックが書かれていた。わたしの知っていることと、知らないこと。それらがすべて、1つの等式につながっていく。

もっと知りたい。もっと見たい。

「美悠ちゃん?」

気づいたら本を読むことに没頭していた。

「この本、わかる?」ひかりが聞いてきた。

「わからない……。けど、面白そう」

「はっはっは、いい心がけだな」淳夫は笑った。「この調子で数学レッスンも頑張れよ。ただ、明日はダンスレッスンだからな」

その後解散となった。

帰り道では、数学のことやごはんのことを考えながら歩いた。もちろん電柱にぶつからないように気をつけながら。

帰宅後、数学の本を読んだ。数学の本といっても教科書ではなく、雑学がいっぱい書かれている本である。オイラーの等式もこの本で知った。この等式の美しさもわかったつもりだった。でも、あの本にはもっといっぱい書かれていた。全然わかっていなかったのかもしれない。数学レッスンではあの本の中身を知れるはず。楽しみになってきた。