ボーカルレッスンを終え、事務所に戻ってきた。
「ご苦労。こんな感じでレッスンをやっていくからな」
「はい!レッスンで成長するの、楽しいです!」ひかりは明るい笑顔で言った。
「その調子だぞ、初本。明日のダンスレッスン、明後日のビジュアルレッスン、明々後日の数学レッスンも頑張れよ!」
「数学……」
「何を怖気付く必要がある。そうだ、数学レッスンについてだが」
そういうと淳夫は本を取り出した。
「こういう本を見つけてな。オイラーの等式を解説している本らしい」
「一冊全部オイラーの等式ということですか?」菫は質問した。
「ああ。それだけ解説する価値のある等式ってことだろう。それに、意欲ある高校生でも読めるって書いてあるから、お前らにぴったりだな」
「なるほど」
「今読んでみてもいいですか?」ひかりは質問した。
「いいぞ」
本が開かれ、わたしたち3人は中身を眺める。
「うわー、難しそう……」ひかりは小さな声で言った。
「このあたりは高校でも習うことだね」菫は言った。
わたしも本を眺める。そこには様々な数学のトピックが書かれていた。わたしの知っていることと、知らないこと。それらがすべて、1つの等式につながっていく。
もっと知りたい。もっと見たい。
「美悠ちゃん?」
気づいたら本を読むことに没頭していた。
「この本、わかる?」ひかりが聞いてきた。
「わからない……。けど、面白そう」
「はっはっは、いい心がけだな」淳夫は笑った。「この調子で数学レッスンも頑張れよ。ただ、明日はダンスレッスンだからな」
その後解散となった。
帰り道では、数学のことやごはんのことを考えながら歩いた。もちろん電柱にぶつからないように気をつけながら。
帰宅後、数学の本を読んだ。数学の本といっても教科書ではなく、雑学がいっぱい書かれている本である。オイラーの等式もこの本で知った。この等式の美しさもわかったつもりだった。でも、あの本にはもっといっぱい書かれていた。全然わかっていなかったのかもしれない。数学レッスンではあの本の中身を知れるはず。楽しみになってきた。