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2-3 ユニット名

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箱星
著者
箱星
のんびり暮らしたい。

「お前ら!」

プロデューサーが部屋の中に入ってきた。

「集まれ。今日は大事な話があるぞ」

美悠もヘッドホンを外してこちらに合流した。

「今日はお前らにユニット名を考えてもらう」プロデューサーは高らかに言った。

「ユニット名ですか!」ひかりは嬉しそうに反応する。

「ああ、これからアイドルとして活動するお前らの名前だ。お前らにはいろいろ案を出してもらう。で、最終的には俺が決める」

「わかりました!」

こうして私たちはユニット名を考えることとなった。

「どうする?」ひかりは私に相談しに来た。

「とりあえずいろいろ案を出してみる?」私は答える。

「そうだよね。どんなのがいいかなー。やっぱり、かわいい感じにしたいよね。それともかっこいい感じにする?」

「どうしよう」

「ご当地アイドルだと地元のものを名前に付けたりするよね。でも私たちはご当地アイドルじゃないもんね」

「数学アイドルだけどね……」

「忘れてた!」ひかりは驚いた表情を見せる。「じゃあ数学を名前に入れた方がいいのかな?方程式とか?かけ算とか?あと何があったっけ……」

「無理して入れなくてもいいんじゃないかな……」私もユニット名の案を考える。「好きなものを入れるのはどうかな」

「いいね!私たちらしさが出るかも」ひかりの反応はよさそうだった。「私はダンスと歌が好きだから、それを名前に入れたいなー。菫ちゃんは何が好き?」

「私は本が好きかな」

「初めて会ったとき言ってたよね。最近はどんな本を読んだ?」

「月が出てくる本を読んだよ。月が世界中を旅して見た景色を、主人公に伝えるの」

「へぇ、素敵なお話だね」

本のことに興味を持ってもらえて嬉しかった。

「美悠ちゃんは?」

ひかりは美悠に近づく。美悠はずっと考え事をしていたようだ。

「ん……?」

「何かいい案浮かんだ?」

「浮かんでない……」

「美悠ちゃんは何か好きなものある?」

「好きなもの?」

「なんでもいいよ」

「なんだろう……」美悠は悩んでいるようだ。

「好きな食べ物とかどう?」

「好きな食べ物……」しばらくの間考えてから美悠はこう答えた。「お菓子、好き」

「お菓子が好きなんだ。どんなのが好き?」

すると美悠はプロデューサーの方を向いた。

「淳夫、お菓子持ってきて」

「だから、ここではプロデューサーと呼べと言ってるだろ!」

そう言いながらプロデューサーはお菓子を取りに行った。

「ほらよ」

戻ってきたプロデューサーはテーブルにたくさんのお菓子を置いた。

「ありがとう」そういうと美悠はクッキーを手に取った。

「お前らも食っていいぞ」

「ありがとうございます」プロデューサーから許可をもらった私はチョコレートを選んだ。

「これ、すき」美悠はそう言ってクッキーを口に運んだ。黄色い円形をしたクッキーだ。

「月みたいだね」ひかりは言った。

「あっ、思い出した」美悠は何かを思い出したようだ。

「なに?」

「月を見るのも、好き」

「へー、そうなんだ」

「天体観測も、やったりする……」

「すごーい」ひかりは感心している。「今度私も一緒にやりたい。いい?」

「いいよ」

「ありがと」

ひかりは笑顔を見せた。それから、私の方を向いて話しかけた。

「そういえば、菫ちゃんも月の話してたよね」

確かに月に関する本を読んだ話をした。

「月にちなんだ名前にするのはどうかな?」

私たちのユニット名を月にちなんだ名前にするという案がひかりから出た。いい案だと思った。

「いいと思う……」美悠も同意見だった。

「じゃあこっちの方向で考えてみよっか」

しかし、ひとつ気になることがあった。

「でも、これだとひかりに関する要素がないかも」

月は私が読んだ本、美悠が好きな天体観測に関係があるものだが、ひかりとは関係がない。どうせなら3人に共通する要素を入れたかった。

ひかりはこう答えた。

「大丈夫!月の形のアクセサリー、持ってるから」

「それでいいの?」

「それに、月の光なら私の名前とも関係あるでしょ?」

「確かに」

「あっ、じゃあこんなユニット名はどうかな?」