まずは数学アイドルが何なのかを知らないといけない。
「数学アイドルって何するんですか?」
「まずはアイドル活動だ」プロデューサーさんは答える。「ステージ上で歌って踊る。それが大切だ」
「それじゃあ、私が思っていたようなことはちゃんとできるんですよね?」
「勿論だ。だが数学も大事だぞ。これからの時代は可愛さ・歌のうまさ、ダンスのうまさの他に、数学力が評価される時代だ」
「本当ですか……?」
やはり数学とアイドルの関係性はわからない。今度は菫ちゃんが尋ねた。
「数学は具体的にどのようなことをするのですか?」
「色々勉強して、それをアウトプットするんだ。例えば、こんな数式がすごいぞ!っていうのをアピールするといいだろう」
数式という言葉が出てきて、苦い思い出がよみがえる。よくわからないものという印象しかないのに、それをアピールするなんて私にできるのかな。
「すごい数式と言ったらこれだな」
プロデューサーさんはそういうとホワイトボードに何かを書き始めた。
数式だ。よくわからない数式が書かれている。
「オイラーの等式」今まで黙って聞いていた美悠ちゃんが口を開いた。
「よく知ってるな。流石だ」プロデューサーは美悠ちゃんを褒めた。
「これがすごい数式なんですか?」私は尋ねる。
「ああ、世界で一番美しい数式とも呼ばれている」
「全然わかりません……」
「なら、当面はこれを理解するのを目標にすればいいんじゃないか?」そうプロデューサーは提案した。「いずれは世界で一番の数学アイドルになるんだから、その第一歩として世界で一番美しい数式を理解するのは大事だろう」
「私にできるかわかりませんけど……、がんばります!」
こうして、私たちの数学アイドルへの挑戦が始まった。