メインコンテンツへスキップ

3-2 思索

·
箱星
著者
箱星
のんびり暮らしたい。

事務所に向かって歩く。もう慣れた道だ。考え事をしながら歩く。

宇宙。わたしたちの住む地球には生命がある。他に生命のある星はあるのだろうか。広大な宇宙はどこまで広がっているのだろうか。

数学。代数学の ii、幾何学の π\pi、解析学の ee をつなげる一つの等式。わたしはこの等式の美しさをどこまで理解しているだろうか。

食事。昼は何を食べようか。

「美悠ちゃーん」

声が聞こえる。知っている声だ。

「あ、ひかり……痛!」

電柱に頭をぶつけた。かなり痛い。

「だ、大丈夫!?痛そう……」

「痛い」

「けがはない?」

「大丈夫……」

「ごめんね、私が急に声をかけたから」

「ううん……。考え事をしながら歩いていたせい……」

考え事に夢中になると周りが見えなくなってしまう。気をつけよう。

ひかりと一緒に事務所に向かった。

「美悠ちゃん、一緒に天体観測しようって言ったじゃん。どんな感じでやるの?」

「えっと、街中だと明るすぎるから、遠くに行く。それで、双眼鏡を使って、天体を見る……」

「面白そう!でも夜だよね?遠くに行って大丈夫かな?」

「淳夫にお願いする」

「プロデューサーさんに?」

「淳夫が車を運転する」

「それなら大丈夫そうだね」

そんな会話をしながら歩いた。事務所に着いた。

「私、トイレ行ってくるね」

ひかりより先に部屋に入る。まだ誰もいない。わたしは部屋の隅のソファーに座る。ヘッドホンを取り出し、音楽を再生する。

ダーク・アンビエント。静かで単調な音楽がわたしを包む。宇宙を感じさせる音楽だ。これを聴いていると思考が散らからないような気がする。わたしは思索の世界へと入っていった。