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【elegant teatime】代数学の基本定理 (1) 【第 1 話】

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箱星
著者
箱星
のんびり暮らしたい。

お屋敷
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素子

わたくしのお屋敷へお越しくださりありがとうございます。

桜子

い、いつ見ても、立派ですね……。

静香

お昼寝したら、気持ちよさそう~……。

芽衣

うお~!すげー家だな!高いものいっぱいありそうだ!

証明の鑑賞会
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素子

わたくしのお屋敷に皆様を招待した理由、それは証明の鑑賞会をするためです。

静香

鑑賞会~?

素子

皆様もご存じの通り、数学では証明が大切です。1 つの定理を証明するのに複数の証明方法があることも多々あります。ある証明は新たな数学の萌芽となり、またある証明はエレガント。このように、同じ定理の証明でも見せる表情はさまざまです。ですから、証明の鑑賞はとても有意義なものだと考えました。

芽衣

なるほどな~。

素子

本日は初回ですから、さまざまな証明が知られている代数学の基本定理を証明いたしましょう。皆様にも証明のご持参をお願いしましたが、準備は万端ですか?

桜子

お、面白い証明を持ってきました……。

素子の証明
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それでは、まずは発案者であるわたくしから発表いたします。

代数学の基本定理とは、複素数係数の nn 次多項式 P(x)=anxn++a1x+a0P(x)=a_nx^n+\cdots+a_1x+a_0 は必ず複素数の根をもつという定理です。

この定理を複素解析を用いて証明いたします。こちらの証明は有名なものだと思われます。

まずはリュービルの定理について復習いたしましょう。リュービルの定理というのは、有界な整関数は定数であるというものでした。

証明は背理法で行います。P(z)=0P(z)=0 が解をもたないと仮定しましょう。すると、1P(z)\frac{1}{P(z)} は整関数になります。そして

1P(z)=1zn1an+an11z++a01zn0(n) \frac{1}{|P(z)|}=\frac{1}{|z|^n}\frac{1}{|a_n+a_{n-1}\frac{1}{z}+\cdots+a_0\frac{1}{z^n}|}\to 0 \quad (n\to\infty)

となりますから、1P(z)\frac{1}{P(z)} は有界です。するとリュービルの定理よりこれは定数ということになってしまいます。

これで証明は完了です。


静香

わたしもはじめて知った証明がこれだったな~。

素子

わたくし、この証明を初めて見たときは感動しました。代数学の基本定理が複素解析で証明できることは当時は不思議でした。

静香

まあ、複素数体に関する定理だから、複素解析が出てくるのは不思議じゃないけどね~。

桜子

むしろ、代数的証明が存在しない、とも言われるくらいですからね……。

芽衣

そうなのか!?オレの持ってきた証明は代数的なつもりだけど。

素子

そうなのですね。それでは、次は芽衣さん、発表をお願いします。

芽衣の証明
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オレは線形代数を使う証明を持ってきたぜ!

代数学の基本定理は、複素数成分の正方行列が必ず複素数の固有値をもつってことと同値になる!だからこれを示す!

まずは nn を奇数とする。Hn\mathcal{H}_nM=MM=M^* をみたす nn 次行列、つまりエルミート行列の集合とする!MM^*は共役転置だ。Hn\mathcal{H}_n は実線形空間で、n2n^2 次元だってことがわかる。つまり奇数次元だ。

行列 CC

C=C+C2+iCC2i C=\frac{C+C^*}{2}+i\frac{C-C^*}{2i}

の形に書けて、(C+C)/2(C+C^*)/2(CC)/(2i)(C-C^*)/(2i) はエルミート行列だ。AAnn 次行列として、Hn\mathcal{H}_n から Hn\mathcal{H}_n への線形写像 f1,f2f_1,f_2

f1(B)=AB+BA2,f2(B)=ABBA2i f_1(B)=\frac{AB+BA^*}{2}, f_2(B)=\frac{AB-BA^*}{2i}

と定める!BHnB\in\mathcal{H}_n だから (AB)=BA=BA(AB)^*=B^*A^*=BA^* だ。そうすると、f1f2=f2f1f_1\circ f_2=f_2\circ f_1 が成り立つ!

ここで、f1,f2 ⁣:VVf_1,f_2\colon V\to V がこれをみたして、VV が奇数次元の実線形空間なら、f1,f2f_1,f_2 は共通の固有ベクトルをもつことが帰納法で示せる!

だからある BB が存在して f1(B)=λ1B,f2(B)=λ2Bf_1(B)=\lambda_1B, f_2(B)=\lambda_2B になる。よって AB=(λ1+iλ2)BAB=(\lambda_1+i\lambda_2)B になる!これは λ1+iλ2\lambda_1+i\lambda_2AA の固有値であるってことだ!

これで奇数次元の場合ができた!一般の次元の場合は 2 で割れる回数の帰納法で示せるらしい!


素子

証明はおそらく正しいのでしょうけど、ずいぶん省略しましたね。

芽衣

すまん、難しいこと考えるのは得意じゃないんだ。

静香

たぶんだけど、奇数次の実行列が固有値をもつことを使うよね?それはどうやって証明するのかな~?

芽衣

それは固有多項式が奇数次の実数係数多項式になるから明らかだ!この多項式は根をもつからな!

静香

そこで中間値の定理を使ってるね~。

芽衣

なに!?間違ってるのか!?

素子

間違いではありませんが、解析的な議論を含むということですね。

桜子

どれだけ代数的に証明しようと思っても、中間値の定理は避けられないみたいですね……。

芽衣

そっかあ。で、次は誰が発表するんだ?

静香

ねむくなってきたから、寝ちゃう前にわたしが発表するね~。

素子

では、よろしくお願いします。

登場人物紹介
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主晴素子(おもはれ もとこ)。いわゆるお嬢様。家庭の影響で美術品に興味を持っていたが、数学の証明も似たようなものであることに気がつき、証明の鑑賞会をするようになった。